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2.  過去の事例 

 私は、過去に御利蛆の刑が下ったことを目撃した証人として、その事例を述べる。

 19年前、私は学生として、すぐ近くでこれを経験した。当時、私の兄弟(事情により絶縁)が海外で知り合った20代前半のドイツ人女性が私の家族と交流を深めるために来日していた。

 父と下の兄弟が住む家は駅から少し離れていた。そして、私は電車通学の関係で駅の近くの家で一人暮らしをさせてもらっていた。彼女の来日が決まると、その平屋で私が彼女と一緒に住むことになった。

 彼女の特徴は、青い目に金色の長髪、そして明るく振舞っていたことである。身長はそれほど高くなく、日本社会に馴染む容姿であった。日本に対する興味をも示していたが、男勝りのところがあった。

 私の兄と交際をしていた彼女は、食事の席や仕事の休憩時に様々な事柄について私の父の見解を尋ねていた。組織作りをしない牧師であり教育者である私の父は、彼女に真実を語った

 

 一定の期間が過ぎ、兄と彼女が結婚を見据えるようになった頃、話題は時々過去のことや深い内容になった。彼女もイエス・キリストを信じていると告白していたため、和室で一緒に祈ることもあった。

 しかし、そのような話題やあまりハイテンションでない時に、彼女の様子の何かが妙であることに父が気づいた。そして、父は牧師として長年多くの人々と真剣に向き合い、カウンセリングをも行っていたため、息子(私の兄)と彼女に家族になることの重みを話した時に、彼女に対して「過去に重い何かがあるのであれば、話してほしい。」と語った。

 しかし、彼女はそれなりに重大な事が過去にあることを認めつつも、それについて話そうとしなかった。

 父は悩んだ。息子と結婚することを望むその彼女が、その若さで隠し続けるそれは、何かの事件でろうと察していた。そしてある日、父は息子と彼女を呼び、彼女に再度、助言をした。すなわち、「過去に重い罪があるのであれば、それを後悔すべき。罪の赦しをいただくために、心の向きを、闇から光へと、悪魔の権力から御神へと変えること。そうすれば、罪の赦しをいただくことができる。そして、キリストを信じることによって清いと見なされる。」と。

 

 そして父は私にも方向付けの言葉をかけ、彼女がその事を私に話す可能性があることを教えた。

 しかし、彼女との二人暮らしが続き、日に日に、彼女は何もなかったかのように振る舞うようになった。

 信じがたかった。

 そして、彼女と二人だけでいる時間を避けるために、私は下校後になるべく父と下の兄弟のいる家で家事等をし、夜間だけその家に戻る生活を送るようになっていった。

 そのような日々のある朝、目覚めた後にいつものように障子を開け、隣の板の間に進もうとした時、私は、その片付いた板の間の床に白っぽい蛆が無数にいるのを目の当たりにし、凍りついた。さらに、隙間もないような天井から、何匹も、糸を引きながらゆっくり下がってきているのを見た。非常に動揺しながら私が「何これ!?」とドイツ語で声を発すると、彼女もすぐに見に来た。その衝撃に呆然と立ち尽くしながら「何で」、「どこから」、「何があって大量発生しているの」と、片言に問いを並べた。これに対し彼女は「あっ、何でだろう。掃除しないとね。私やっとくから、朝ごはんの準備しててよ。」と、冷静さを保ったまま、言った。

 その言葉を受け、私が「あっ、ありがとう。」、「いいの?」と聞き返すと、彼女は「うん、やっとくから。大丈夫だよ。」と普通に答えた。

 半ば放心状態の私は、学校に行く準備をし、台所で朝ごはんの準備をした。

 やがて、彼女が台所に現れ、「今終わったよ。どこから来たか分からないけど、片付いたから。朝ごはん食べよ。」と何もなかったかのように言った。

 朝食も喉を通らない私の隣で彼女は普通に食事をし、約30分後に私を送り出した。

 夕方、私は朝の出来事と衝撃を父に話した。父も耳を疑い、室内や天井を見に来てくれたが、蛆がわくような理由もなければ、大量発生したという痕跡すら無かった。

 しかし、そこから何日も何日も、明くる日も明くる日も、朝、起床して障子を開けると同じ事態が発生していた。

 私はその衝撃を受け止めきれず、言葉を失っていたが、彼女は日に日に普通になり、その数百匹の動く白っぽい蛆を箒や掃除用具で集め、処分した。

 

 この事態を受け、父は彼女に話した。「今ならまだ間に合う。過去に何があったかを話すべき。蛆の大量発生は、あなたの固い心が砕かれるために、そしてその罪を悔いるために、毎朝、起きている。」。だが、彼女は黙ったままであった。

 

 彼女が毎朝、普通にご飯を食べることができたその心理状態が理解できなかった。そして、その蛆の大量発生を問題にも感じず、普通に振る舞っていた彼女であったが、その心が、日に日に固く、冷たくなっていったことを私はそばで感じた

 

 

 司宮の構造の中で任務を受けている父は、一定期間待ったが、彼女はその不正を隠し通せると思い、頑なになった。

 その間、祈りをもって進んだ父と協力者に次の内容が示された。

 すなわち、彼女がドイツのあるカルト組織に属していること、及び、彼女がそのカルトの儀式に参加していたこと、並びに、そのオカルト儀式でルーレットのようなものを使っていたこと。

 さらに、ルーレットが当たる会員が、次の特定の人を殺める、という儀式であったこと、並びに、彼女がその儀式に複数回参加していたことが発覚。

 そして、ある日、儀式中にルーレットの球が彼女の目に止まったこと、並びに、それを受け、彼女が実際に人を殺害したことが示された。

 

 御司様がお示しくださったこの重大事実の幾つかを、父は証人の前で彼女に話した。

 彼女は、それを否定しなかった。

 

 しかし、時すでに遅し。

 彼女の心は氷のように固く、冷たくなっていた。

 哀れみの期間が終わった。

 

 父は、彼女にドイツに戻るように言った。

 そして、彼女は、去った。

 

 蛆の発生も止まった。

 そしてその後、二度と発生しなかった。

 

 

 これが、御利蛆の刑である。

うじ

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